往生際おうじょうぎわ)” の例文
するとまあ何としたことだ、又してもむつくり黄色い頭がもちあがつたぢやないか。何たる往生際おうじょうぎわの悪いやつだ、と僕は思はず舌うちしたね。
三つの挿話 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「すると、僕の方はまだ別の美人に希望を持っていいのかな」と、ドレゴは往生際おうじょうぎわが悪かった。それに止めを刺すかのようにエミリーが早口に喋りだした。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
だが、自雷也は偉い、あれは、義賊だからな。だから、日本まで名が伝わった。泥棒でも、何かしておかないと、往生際おうじょうぎわに人にわらわれるよりも、何だか、一生涯を
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「———何もそんな言訳をなさらなくってもいいじゃございませんか。男と云うものは往生際おうじょうぎわ肝腎かんじんですわ。第一わたくしたちに対しても失礼じゃございません?」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
僕は往生際おうじょうぎわの好いのに感心していささか物のあわれを催したが、矢っ張り此方は若いってことが後から分った。君、大友は辞令が出ると直ぐに○○中学校の校長になったんだよ
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
林「ふむゝ、貴様は往生際おうじょうぎわの悪い奴だな、よし此の上は手前てめえの身体に聞くよりほかはねえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
男一ぴき、女の胸中の恋人に幻影化され偶像にされ、病死の往生際おうじょうぎわの念仏代りになる。あまり名誉なことではない。それにつけても普通の人情には縁の薄い自分であることが判る。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
殿村、往生際おうじょうぎわの悪いやつだな。もう観念したらどうじゃ。品子さんを
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「理窟ではない、貴様がどうしても無用の留立てをして、ここで拙者の往生際おうじょうぎわを邪魔立てしようというなら、してみろ、足手まといの貴様から先に叩き斬り、仏頂寺は心置なく腹を切って死ぬまでだ」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悪の生涯も、やって通って来てみれやあ、あぶくみたいなはかなさだ。こんなことなら、達者のうちに、魂を入れかえて、善人になっておいた方が、まだ、往生際おうじょうぎわが楽だったのにと、後悔もされる。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ハハハ……、オイ川手、貴様も実業界では一廉ひとかどの人物じゃないか。みっともない、そのざまは何だ。オイ黙らんか。黙れというのだ。……まだ泣いているな。往生際おうじょうぎわの悪い奴だ。……よし、それじゃ俺が黙らしてやろう」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「案外往生際おうじょうぎわが好かったね」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ええ、往生際おうじょうぎわの悪い女だッ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)