強味つよみ)” の例文
またかまどひるへび寝床ねどこもぐ水国すいごく卑湿ひしつの地に住まねばならぬとなったら如何であろう。中庸は平凡である。然し平凡には平凡の意味があり強味つよみがある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
また教会へ行て自分より劣った牧師の説教でも拝聴し、この人も自分と同じことを思うているかと強味つよみを得て帰る。日本ではコウいうことがうまく行かぬ。
人格を認知せざる国民 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
広い国原に降る五月雨をこの最上川だけに集めているような感じがするところに、この句の強味つよみがあるのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
とは云え彼の最大の強味つよみはその強大な人道主義であった。憐れな人夫達を救わなければならない。——この愛他的人道主義には、ことごとく人夫達は感激していた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
前者の透明な堅実味、後者の豊かな情愛とは、好み好みによって取捨しゅしゃが定まるがどちらも良いものであるに相違なく、ただ吹込みの新しいコルトーの方に強味つよみのあることは疑いもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
人が喰合くいあう都会では、人口の増加は苦痛くつうの問題だが、自然を相手に人間のたたかう田舎の村では、味方の人数が多い事は何よりも力で強味つよみである。小人数こにんずの家は、田舎ではみじめなものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)