引見いんけん)” の例文
わたくしはたれの紹介をも求めずに往ったのに、飯田さんはこころよ引見いんけんして、わたくしの問に答えた。飯田さんは渋江道純どうじゅんっていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
飛報が都へはいったのは月のすえで、まずその詳細を第一に知ったのは、宰相さいしょう官邸で早打の使者を引見いんけんした大臣蔡京さいけいであったこと、いうまでもない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まるで一国の帝王がその臣下を引見いんけんする様な、おごそかな儀礼を以て、この昔者むかしものの老婆を驚かせました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
花岡伯爵家では二日が正式のご年礼で、お殿様が旧藩士をご引見いんけんなさる。四日の晩は新年会と称して、おやしき内のものが集まる。女中や書生のはてまでだから、ナカナカの大人数になる。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
念入りにしらばくれている秀吉よと、はらには怒りながら、彼もまた、とぼけた顔して、使いの大島雲八を引見いんけんした。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その人達を引見いんけんした後、小池氏は新聞記者に次の通り語った。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
家康は、もうとッくに、甲州こうしゅう北郡きたごおり領土りょうどへ帰国したものと思っていた穴山あなやまが、また途中から引きかえしてきたのは、なにごとかと意外におもって、そくざに、かれを引見いんけんした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深夜、城内の一室で、信長がその二人を引見いんけんして、長時間にわたる密談を交わしたことも、極く一部の者と、その晩、馬の口取としていて行った渡辺天蔵のほかは知る者もなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)