引易ひきか)” の例文
かまへ可慎つつましう目立たぬに引易ひきかへて、木口きぐち撰択せんたくの至れるは、館の改築ありし折その旧材を拝領して用ゐたるなりとぞ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
我強がづよい仙さんに引易ひきかえ、気易きやすの安さんは村でもうけがよい。安さんは五十位、色の浅黒あさぐろい、眼のしょぼ/\した、何処どこやらのっぺりした男である。安さんは馬鹿を作って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もとよりあはひ幾許いくばくも有らざるに、急所の血をいだせる女の足取、引捉ひつとらふるに何程の事有らんと、あなどりしに相違して、彼は始の如く走るに引易ひきかへ、此方こなたは漸く息疲いきつかるるに及べども
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
市街は見ず、橋から引返えす。帰路斗満橋上に立って、やゝ久しく水の流を眺める。此あたり川幅かわはば六七間もあろうか。㓐別橋からながむる㓐別川の川床荒れて水の濁れるに引易ひきかえ、斗満川の水の清さ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
妻の喜はあふるるばかりなるに引易ひきかへて、遊佐は青息あをいききて思案にれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)