廓清かくせい)” の例文
だから先生がいち早く身をひかれたのはいかにももっともなのであるが、しかしまたそれだけに先生の廓清かくせい的な仕事の余地もあったのである。
露伴先生の思い出 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
沼南はまた晩年を風紀の廓清かくせいささげて東奔西走廃娼禁酒を侃々かんかんするに寧日ねいじつなかった。が、壮年の沼南は廃娼よりはむしろ拝娼で艶名隠れもなかった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かつての神仏分離の運動が過ぎて行ったあとになって見ると、昨日まで宗教廓清かくせい急先鋒きゅうせんぽうと目された平田門人らも今日は頑執がんしゅう盲排のともがら扱いである。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
故に我々はいわゆる政界の廓清かくせいを計りて憲政の順当なる進歩を見んとせば、まず以て議員と人民との関係を正すことに綿密なる注意を加うるを必要とする。
その志はかたじけないが、日本の前途はまだ暗澹たるものがある。万一吾々が失敗したならば貴公あんた達が、吾々の後跟あとを継いでこの皇国廓清かくせいの任に当らねばならぬ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
イエスによって宗教と政治の廓清かくせいは行なわれ、イスラエル王国の復興は実現せられるであろう。今、過越の祭りを直前に控えて群衆は数多くエルサレムに集まっている。
末路寂寞せきばくとしてわずか廓清かくせい会長として最後の幕を閉じたのはただに清廉や狷介けんかいわざわいしたばかりでもなかったろう。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ことに神仏分離の運動を起こして、この国の根本と枝葉との関係を明らかにしたのは、国学者の力によることが多いのであり、宗教廓清かくせいの一新時代はそこから開けて来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もっと華やかな、もっと濃厚な、そうしてもっと広い区域になった……と知るや知らずや、その筋のお役人は、千束町のあとに並んだ果物屋だけを勘定して、浅草は廓清かくせいされたと云っている。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)