廉価れんか)” の例文
旧字:廉價
繁殖を目的とせざる繁殖の行為には徴税がない。人生徒事の多きが中に、避姙と読書との二事は、飲酒と喫烟とに比してすこぶる廉価れんかである。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうして彼らが熟知している唯一のことは、如何に彼らの作が廉価れんかであるかということのみであろう。だが摂理せつりはいつも不思議である。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
独逸と我邦とは事情も違いますけれどもモー一層牛乳屋が勉強して牛乳の販売商を増加したらば今より廉価れんかに牛乳を売る事が出来ましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
僕の本棚ほんだなの本は、ほとんど廉価れんかの文庫本のみにして、しかも古本屋から仕入れしものなるに依って、質の値もおのずから、このように安いのである。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
異国に比べて廉価れんかとあって、以前より流出いたしたるを慨し、支那の商人にむねを含め、かえって海外より金および銀を、輸入いたすように計らいました。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
納豆が嫌いとあっては話にならないが、納豆好きだとすれば、こんなに簡単に、こんなに調子の高い、こんなに廉価れんかな雑炊はないといったくらいのものである。
比較的簡単で廉価れんかでさうしてこれほど有益なものは他に類が少いであらう。(六月二十四日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
成るべく知人や出入りの者などに廉価れんかで譲るようにして、希望者のない品物だけを全部家具屋に売り払ってしまい、わずかにピクニック用のかごに這入った食器類を残して置いて
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今よりも一層優良な煙草を一層廉価れんかで供給されんことを希望する次第である。
ゴルフ随行記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
阿片薬を廉価れんかに販売したり、まった、月日や年代を言い当てたりするのは、誰ひとりとして、いやさ諸君、誰ひとりとして、ここにいられるわが師ギヨ・ゴルジュウ大先生におよぶものはない……
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
横町の道具屋などに意外なもうかたをされる代りに、時とするとこう云う織屋などから、差し向き不用のものを廉価れんかに買っておく便宜べんぎを有している事などに移って、しまいにその家庭のいかにも陽気で
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしはお雪が永く溝際の家にいて、極めて廉価れんかに其こびを売るものでない事は、何のいわれもなく早くから之を予想していた。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)