店立たなだ)” の例文
もう一人は車夫くるまやでさ。生れてから七転びで一起もなし、そこで通名とおりなをこけ勘というなし。前の晩に店立たなだてをくったんで、寝処ねどこがない。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いくらか妙に思われますのは、数ヵ月から並びの借家が、いっせいに店立たなだちしましたことで、なぜだろうと私たちはうわさをしております」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「え、町内で知らない者はありゃしません。父さんに無理な請負をさせて、さんざん損をさせた上、家作かさくを取上げたり、店立たなだてを喰わせたり、その上三月も半歳も只で使ったり——」
「今は明いていないが、店立たなだてを食わせれば直ぐ明く」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まさかに店立たなだては食はせるとも云ふめえ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「まさか店立たなだてではあるまいな」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その晩の為体ていたらくには怖毛おぞけを震って、さて立退たちのいて貰いましょ、御近所の前もある、と店立たなだての談判にかかりますとね、引越賃でもゆする気か、酢のこんにゃくので動きませんや。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二月ばかり給金のかりのあるのが、同じく三月ほどとどこおった、差配で借りた屋号の黒い提灯ちょうちんを袖に引着けて待設ける。が、この提灯を貸したほどなら、夜中に店立たなだてをくわせもしまい。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)