平家蟹へいけがに)” の例文
壇の浦で有名な平家蟹へいけがになどは八本ある足の中の四本を用いて、はまぐりのごとき貝の空殻あきがらを背負い、他の四本でうている。
自然界の虚偽 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
また「平家蟹へいけがに」の絵の横に「カゲノゴトクツキマタウ」と書いて、あとで「マタウ」のタを消してトに訂正してあったりするのをしみじみ見ていると
赤くゆでた平家蟹へいけがにをうんと大きくして、人間の顔の四倍ぐらいに拡大したようなもの——それは見たことのない動物の顔をお面につくったものであった——が
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのむこうには首をのばして疾走する馬の頭、次の間との境の欄間のところには平家蟹へいけがにみたいな面が二つ、平家蟹より品がなくて妖気を帯びてるのは蜘蛛くもの精でもあろうか。
胆石 (新字新仮名) / 中勘助(著)
平家蟹へいけがにの殻へ目口をえがきたるものあり、草鞋わらじの片足をくぎづけにしたるもあり、塩鮭しおざけの頭を藁縄わらなわにて貫きてつるせるもあり、そのなんの意たるや解するに苦しむことが多い。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
平生の志の百分の一も仕遂しとげる事が出来ずに空しくだんうらのほとりに水葬せられて平家蟹へいけがに餌食えじきとなるのだと思うと如何にも残念でたまらぬ。この夜から咯血かっけつの度は一層はげしくなった。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
しつっこいやつだ、と広一郎は云った。相手はなに者だ。お武家です。家中の者か。そうです、御中老の佐野さまの御長男です。すると要平だな。そうです。あの平家蟹へいけがにめ、と広一郎は云った。
女は同じ物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
顕微鏡で拡大した毒蜘蛛の頭部の様な、醜怪きわまりなき顔があった。そして、その頭部から、平家蟹へいけがにはさみが二本、ニョッキリと、遙かの地平線へ伸びて、呼吸をする様に閉じたり開いたりしていた。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平家蟹へいけがにでしょう? 何うしたの? 買ったの?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
平家蟹へいけがにはまだいるかの。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤蛙いくさにたのめ平家蟹へいけがに 同
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)