常着つねぎ)” の例文
下城した功兵衛は、帰宅するとすぐ常着つねぎに替え、着ながしのまま家を出た。夕食は済ませて来ると云い、ゆき先は告げなかった。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
自分の常着つねぎも一枚、お里は、ひそかにそう思っていたが、残り少ない金を見てがっかりした。清吉は、失望している妻が可愛そうになった。
窃む女 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
一 常着つねぎは木綿筒袖たるべし
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は稽古着ではなく、常着つねぎに袴という姿で、それがかなり颯爽さっそうとして見えたし、また、一面にはひどく冷酷な感じでもあった。
「これゃ常着つねぎにゃよすぎるわい。」
老夫婦 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
常着つねぎに使ってくれという、綱宗の意向を伝え、下襲などは不作法であるが、肌につけていてもらいたいのだ、と云っているとのことであった。
石川島へ送られたのは、栄二とも五人で、みな常着つねぎ藁草履わらぞうりをはかされ、栄二ともう一人の若者とが腰繩でつながれた。二人だけは暴れだすとみられたらしい。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おそれいりますがわたくしに着替えをさせて下さいまし、常着つねぎになりたいと存じますから」
日本婦道記:藪の蔭 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それはこの土地の漁師たちに共通の常着つねぎであるが、もう綿入の股引をはく季節ではなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それはこの土地の漁師たちに共通の常着つねぎであるが、もう綿入の股引をはく季節ではなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
常着つねぎの上へはかまをはき、脇差だけ差し、印鑑の入った鹿皮の小さな袋を持って、渡辺九郎左衛門は客間へ出ていった。二人の訪問者は、ひざの前に帳面ようの物を置いて、坐っていた。
なかなかしゃれ者とみえ、栗色の縞の着物に黄麻きびらの羽折を重ね、白の足袋をはいていたが、帰って来るとすぐに、それらを脱ぎちらして、おみやをびしびしと叱りながら、常着つねぎに着替えた。
袴はぬいでいるが、着たままである、周防も常着つねぎの着ながしであった。
それから約一刻のち、甲斐は常着つねぎのまま、はかまもはかず、編笠をかぶった姿で、長徳寺の門前で茂庭主水とおちあった。主水も単衣ひとえの着ながしで、やはり編笠をかぶり、片手に釣竿と餌箱を持っていた。
旅装ではなく、常着つねぎはかまをつけ、月代さかやきひげっていた。