帰臥きが)” の例文
こんな豪傑がすでに一世紀も前に出現しているなら、吾輩のようなろくでなしはとうに御暇おいとまを頂戴して無何有郷むかうのきょう帰臥きがしてもいいはずであった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半蔵の学友、蜂谷香蔵はちやこうぞう、今こそあの同門の道づれも郷里中津川の旧廬きゅうろ帰臥きがしているが、これも神祇局時代には権少史ごんしょうしとして師の仕事を助けたものである。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其処そこは神田区松枝町二十三番地である。大正六年玉池仙館は主人石埭翁の名古屋に帰臥きがするに臨んで日本橋の富商某氏の有となり、大正十二年九月の大火にかれた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いくばくもなく官を退いた後は、故山こざん虢略かくりゃく帰臥きがし、人とまじわりを絶って、ひたすら詩作にふけった。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
真偽はわからぬがかれは熊谷くまがやの豪族の子孫であることだけはあきらかであり、また帝国大学初期の卒業者であることもあきらかである、なんのために官職を辞して浦和に帰臥きがしたのか
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
湖山は国事に奔走した功によって維新の際太政官権弁事に任ぜられ記録編輯の事を掌ること僅に三個月ばかり、母の病めるを聞き官を辞して故郷近江おうみ帰臥きがしたのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)