左眼さがん)” の例文
それら脂粉しふん絢爛けんらん調度ちょうどにとりまかれている陶工久米一は、左眼さがんのつぶれた目っかちで、かつ醜男ぶおとこで、えてはいるが、年、六十から七十の間。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ますますひどいようですよ。左眼さがんは永久に失明するかも知れません。右眼も充血がひどくなっているそうです」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は気を落著おちつけようとして眼を閉じ、雑念を拒止きょしして心を落著けて腰を下した。彼は一つのひらたい丸い黒い花が、黄橙おうとうしんをなして浮き出し左眼さがん左角ひだりかどから漂うて右に到って消え失せた。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
蹴るや左眼さがんまとそれて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ところがあの騒ぎによって彼女の身体に大きな異変が起った。それは飛んで来た硫酸に眼を犯され、右眼うがんは大した損傷そんしょうもなかったが、左眼さがんはまるで駄目になった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蹴るや左眼さがんまとそれて
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ダリアは黒眼鏡をはずして見たが、左眼さがんはまるででたように白くなり、そうでないところは真赤に充血していた。右の眼はやや充血じゅうけつしている位でまず無事な方であった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)