巌間いわま)” の例文
旧字:巖間
白い岩のうえに、目のさめるような躑躅つつじが、古風の屏風びょうぶの絵にでもある様なあざやかさで、咲いていたりした。水がその巌間いわまから流れおちていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『まあ見事みごと百合ゆりはな……。』わたくしおぼえずそうさけんで、巌間いわまからくびをさししていた半開はんかい姫百合ひめゆり手折たおり、小娘こむすめのように頭髪かみしたりしました。
妙源 こんな風におびえながら。甲斐かいのない見張りをしているうちには、もうとっくに上って、どこぞ雷にさかれた巌間いわまにでも潜んでいるか知れぬことだ。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
いやいや、其処そこまでではありません。ただその山路へ、堂の左の、巌間いわまを抜けて出たものでございます。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは或る信心ぶかい二人の女人によって建てられたのだというものもあったし、それゆえその近くの巌間いわまから清冽な水のわき出るのを「尼の泉」と唱えるなどともいった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)