さい)” の例文
「あれ、あの石橋しゃっきょうの欄干に腰かけて、さっき散々さんざん、わが輩を苦しめやがったさい坊主と行者のきゅうしょう一が、まだ執念ぶかく見張っている」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ以来幕末まで、日本人とは婚姻を結ばずにずっと此処ここに住んでいたのでありますから、今もちんとかきんとかさいとかいう名を用いる者が少くありません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
後に柳は事情があって武昌ぶしょうにいった。その時さいという老婆が水晶の界方を一つ持っていて、これと寸分違わない物を持っている者があるならむすめを嫁にやろうといった。
織成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「ズボンが濡れているから俺あよっぽどよそうかと思ったがね、さい本が放さねえんだよ」
親方コブセ (新字新仮名) / 金史良(著)
さいは長安の永楽里えいらくりという処に住んでいた。博陵はくりょうの生れで渭南いなんに別荘を持っていた。貞元年中のこと、清明せいめいの時分、渭南の別荘へ帰って往ったが、ある日、昭応しょうおうという処まで往くと陽が暮れてしまった。
崔書生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ふウむ。さいきゅう。そんなものが恐ろしいのか。とにかく、もうすこし話をきかせてくれ。その代りあっちで粟粥を一杯ご馳走になるぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝鮮人をすべて高麗人と呼ぶのは昔からのならわしである。今も半数は鮮姓を承ぎ、ちんさいていぼくきんりんべん等昔のままである。明治までは特殊な部落であって雑婚を堅く封じられた。
苗代川の黒物 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
いううちにも、すでに彼方の石橋の上では、きゅう行者とさい坊主が、こなたの二人を見つけたか、遠目にも巨眼熒々けいけい、いまにも斬ッてかかってきそうな構えを示していた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)