峨々がゝ)” の例文
そも/\、此山と申すは、南は野山漫々まん/\として百餘里に及び、北は身延山高く峙ちて白根が嶽につづき、西には七めんと申す山峨々がゝとして白雪絶えず、人の住家一もなし、たま/\
また少しく小高こだかい処は直ちに峨々がゝたる山岳の如く、愛宕山あたごやま道灌山どうかんやま待乳山まつちやまなぞと呼ばれてゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
吊橋の上に峨々がゝとそびえてゐた山々は、いつの間にか、乳色のもやの中へ姿を没してゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
見脱みおとさんが惜ければ母衣ほろは掛けず今井四郎の城跡といふあり此間右は木曾川みなぎり流れ左りは連山峨々がゝたるがけなるが左りの山をつんざいて横に一大河の流れて木曾川へ入るあり此の棧橋かけはしの上より車を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
敬すべきが如し、然れども是れ銅臭紛々たる人に非ずんば、黄金山を夢むるの児なり、其中に於て高潔の志を有し、慷慨の気を保つもの、即ち晨星しんせいたゞならじ、束髪峨々がゝとして緑鬖りよくさん額をつゝみ
峨々がゝたる高山のつらなりのせゐか、一日中に、晴曇雨が交々こもごも来るところで、颱風たいふうの通路にあたるせゐか、屋久島は一年中、豪雨がううに見舞はれ、村の財政は、窮乏に追ひこまれ、治水対策が
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
北には身延嶽みのぶたけ天をいただき、南には鷹取たかとりたけ雲につづき、東には天子てんし嶽日たけひとたけをなじ、西には又、峨々がゝとして大山つづきて白根しらねたけにわたれり。さるのなくこゑてんに響き、蝉のさえづり地にみてり。