岡谷おかや)” の例文
西沢は煙草たばこに火をつけて、彼が最も得意とする、信州岡谷おかや付近の紡績工場へ勤めていたころのローマンスの一くさりを語り始めた。彼の話は実にうまかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
道は二つある。これから塩尻峠しおじりとうげへかかり、桔梗ききょうはらを過ぎ、洗馬せば本山もとやまから贄川にえがわへと取って、木曾きそ街道をまっすぐに進むか。それとも岡谷おかや辰野たつのから伊那いな道へと折れるか。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
誰も知る通り、製糸の業が盛な所で、岡谷おかやとその近在だけで、日本全産額のなかばを占めるといいます。この国はどんなに多くかつての綿畑を桑畑に変えてしまったでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼女は岡谷おかやあたりの製糸家だという、大尽客の座敷へ出たことなどをおもい出していた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
岡谷おかや
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あけの六つどきには浪士は残らず下諏訪を出立した。平出宿ひらでしゅく小休み、岡谷おかや昼飯の予定で。あわただしく道を急ごうとする多数のものの中には、陣羽織のままで大八車だいはちぐるまを押して行くのもある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)