山峡さんきょう)” の例文
旧字:山峽
「なんで。——この山峡さんきょうを脱走したとて、四面は山と海との二十七関、とても逃げおおせぬことはそれがしも心得ている」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このダムは、山峡さんきょうにつくった人工の池をせきとめている。それは巨大な鉄筋てっきんコンクリートできずいたかきであった。水をせきとめるための巨大な壁であった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帽に照る日の、たちまちに影を失うかと思えば舟は早くも山峡さんきょうに入る。保津の瀬はこれからである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
[七月四日に]チベット西北原のホルトショ州の山峡さんきょうに達しました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
居ながらにして幽邃閑寂ゆうすいかんじゃくなる山峡さんきょう風趣ふうしゅしのび、渓流けいりゅうひびき潺湲せんかんたるも尾の上のさくら靉靆あいたいたるもことごとく心眼心耳に浮び来り、花もかすみもその声のうちに備わりて身は紅塵万丈こうじんばんじょうの都門にあるを忘るべし
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)