小競合こぜりあい)” の例文
所々に小競合こぜりあいが起って、そこだけが急に騒ぎ出して、群衆がハミ出してくる。警官が剣をおさえながら、そこへバラバラと走って行く。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
石垣山の崖上へ政宗をつれだして小田原城包囲の陣形を指し、田舎の小競合こぜりあいが身上のお前にはこの大陣立の見当がつくまいな。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
その時にう云う面白い事がありました。官軍が江戸に乗込んでマダ賊軍が上野にこもらぬ前に、市川辺に小競合こぜりあいがありました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
欣七郎は朝飯あさはん前の道がものういと言うのに、ちょいと軽い小競合こぜりあいがあったあとで、参詣おまいりの間を一人待つ事になった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その他は単なる小競合こぜりあいにすぎなかった。そこですべてが決する証拠には、そこではまだ戦いが始まっていなかった。
それらの人たちも、小競合こぜりあいはしたけれども、本場所で晴れの勝負をしたことはないから、ほんとうのところはいずれがまさりいずれが劣ると判断はつけられまい
自分が本気になれない焦立たしさもわだかまっていて、ともすると小競合こぜりあいが、佃との間に再燃しそうになった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
絶えまなく小競合こぜりあいを繰りかえす軍閥の苛斂誅求かれんちゅうきゅうと、土匪や、敗残兵の掠奪に、いくら耕しても、いくら家畜をみずかっても、自分の所得となるものは、何一ツなかった。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
だから地上で果たすべき最後の使命を果たす日までこれを大切にしなければなりません。敵との小競合こぜりあいによって、福音宣伝のための精力を浪費することは避けねばならない。
けれどもそれは小競合こぜりあいの競争であって小兵こものの戦争であって、匹夫ひっぷあらそいというものである。
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ちょっと小競合こぜりあいが行われたが、勝負は問題にはならなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おかみさんの報告も淡々たるもので、僕はその数日のニュースから判断して、多分タイ国の国境で小競合こぜりあいがあつたぐらゐの所だらうと独り合点をし、三時間余り有り合せの本を読んでゐた。
真珠 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
仏印とタイ国の国境あたりの小競合こぜりあいだらうぐらゐにきゝ流してゐた。
ぐうたら戦記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)