小咄こばなし)” の例文
江戸の小咄こばなしにある、あの、「誰でもよい」と乳母うばに打ち明ける恋いわずらいの令嬢も、この数個のほうの部類にいれてつかえなかろう。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
四、彼は昨日さくじつ小咄こばなし文学」を罵り、今日こんにち恬然てんぜんとして「コント文学」を作る。うべなるかな。彼の健康なるや。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
坊主が般若湯はんにゃとうをのむというのは落語や小咄こばなし馴染なじみのことだが、あれは大概山寺のお経もろくに知らないような生臭坊主で、何代目かの管長候補に目されている高僧は流石さすがに違う。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
気のきいた小咄こばなしをしていた時、食卓のはしの方で赤い短い頬鬚ほおひげをはやした男が、ここへ来る途中で見知らない一人の気違いに出逢ったことを、尾鰭おひれをつけて話しているのに気がついた。
彼らのする猥談は、小咄こばなし的なニュアンスも何の洗練もあるわけではない。
江戸小咄こばなしなどの類にも、かなり通じていましたから、剽軽ひょうきんな事をまじめな顔をして言って、家の者たちを笑わせるのには事を欠きませんでした。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
江戸の小咄こばなしにも、あるではないか。朝、垣根越しにとなりの庭をのぞき見していたら、寝巻姿のご新造が出て来て、庭の草花を眺め、つと腕をのばし朝顔の花一輪をみ取った。
女人創造 (新字新仮名) / 太宰治(著)
江戸の小咄こばなしにも、あるではないか。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)