寤寐ごび)” の例文
寤寐ごびにもはなれず起居ききよにもわすれぬ後來のち/\半身はんしん二世にせつま新田につたむすめのおたかなり、芳之助よしのすけはそれとるより何思なにおもひけん前後ぜんご無差別むしやべつ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
早暁臥床を出でゝ、心は寤寐ごびの間に醒め、おもひは意無意いむいの際にある時、一鳥の弄声を聴けば、こつとしてれ天涯に遊び、忽として我塵界に落るの感あり。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
あの寤寐ごびにも忘れ得ぬ、葉子のことすら、振り落して飛ぶ一瞬にうつる、妖しき雲にも似た幻影は、黒吉をぐいぐいと力強く四次元の宇宙へ連れ込むのだった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
家に還りてより、優しき貴女の姿、賑はしき拍手の聲、寤寐ごびの間斷えず耳目を往來せり。喜ばしきは折々我夢のうつゝになりて、又ボルゲエゼの館に迎へらるゝ事なりき。
余が寤寐ごびさかいにかく逍遥しょうようしていると、入口の唐紙からかみがすうといた。あいた所へまぼろしのごとく女の影がふうと現われた。余は驚きもせぬ。恐れもせぬ。ただ心地ここちよくながめている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)