家居いえい)” の例文
浦づたいなる掃いたような白い道は、両側に軒を並べた、家居いえいの中を、あの注連しめを張った岩に続く……、松の蒔絵まきえの貝の一筋道。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は意気婀娜あだなど形容詞のつくべき女諸処に家居いえいして、輪番かわるがわる行く山木を待ちける由は妻もおぼろげならずさとりしなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
推古時代にふさわしいのは、道に飢臥する現状と愛妻に抱かるる家居いえいとの対照ではなくて、目前に見るところの飢人への単純直接な愛憐の情の表出である。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それより、かの所へ行きしは昼過ぎにて、その辺りの家居いえいをのぞきおれども、碁を打ちておる家も見えず。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかしさいわいと何事も無く翌日になったが、昨日きのうの事がなんだか気にかかるので、矢張やはり終日家居いえいして暮したが、その日も別段変事もおこらなかった、すると、その翌日丁度ちょうど三日目の朝
鬼無菊 (新字新仮名) / 北村四海(著)
忠臣蔵にはこの近くのかいどうにいのししぎが出たりするように書いてあるからむかしはもっとすさまじい所だったのであろうがいまでもみちの両側にならんでいるかやぶき屋根の家居いえいのありさまは阪急沿線の西洋化した町や村を
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
思案入道殿のやかたに近い処、富坂とみざか辺に家居いえいした、礫川れきせん小学校の訓導で、三浜なぎさ女史である。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家居いえい取払い空地となし置くものなり。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)