宮内省くないしょう)” の例文
この画は「淡煙たんえん」と題して展覧会に出でたる者なり。(宮内省くないしょう御用品となる)これらは皆自分のために勉強したる例なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
平生へいぜいはふつうの人のはいれない、離宮やぎょえんや、宮内省くないしょうの一部なども開放されたので、人々はそれらの中へもおしおしになってにげこみました。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
この道程みちのりもさほど遠いとも思わず初めのうちは物珍しいのでかえって楽しかった。宮内省くないしょう裏門の筋向すじむこうなる兵営に沿うた土手の中腹に大きなえのきがあった。
おれが仏なら、七蔵しちぞう頓死とんしさして行衛ゆくえしれぬ親にはめぐりあわせ、宮内省くないしょうよりは貞順善行の緑綬りょくじゅ紅綬紫綬、ありたけ褒章ほうしょう頂かせ、小説家にはそのあわれおもしろく書かせ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、その人は、宮内省くないしょう調度頭ちょうどのかみをしている男爵は、内親王の御降嫁ごこうかの御調度買入れのために、欧洲おうしゅうへ行っていて、此の八月下旬でなければ、日本へは帰らないのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
このみすじという寿司屋は、かつて宮内省くないしょう等への出前、何百人という出前を扱った寿司屋であるというから、名人芸を云々うんぬんするよりも、むしろ事業的に成功した寿司屋であったように思われる。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
これ医者ならば博士は皆名医なりと思ひ、宮内省くないしょう御用と銘打ちし菓子は皆上等と心得て安心するやからなり。名義に拘泥こうでいする風習勿論昔よりこれありしといへども近来に至つてますます甚しきは何ぞや。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
われわれから考えると、いやしくも宮内省くないしょうの大膳頭である。
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)