ほんと)” の例文
旧字:
しまひには、自分で自分を疑つて、あるひは聞いたと思つたのが夢ででもあつたか、と其音のほんとうそかすらも判断が着かなくなる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ほんとに鶴子の悲しむのも尤もだ。義理の老爺さんや老婆さんの下で下女働きは苦しい。女の狭い胸ではそれに違ひはない。
其の頃は鉄砲が流行はやらんから矢戦であったが、此方こちらは遂に矢種が尽きたゆえ矢切村と申す、其の時に鴻の鳥が浅瀬を渡ったという、これはうそほんとか分らんが
「桜井さんで御座いますか。ほんとに歯医者なぞをさして置くのは惜しいッて、人が申すんで御座いますよ」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長「そんならおめえ、己のほんとの親達も知ってるのか、何処のなんという人だえ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『然し、ほんとに賄も僕の様に遅れては困るよ、ね』
座敷も無くなって、ほんとにこんな貧乏になりましたもみんな私の心柄で、新吉さんもさぞこんな姿で悋気りんきらしい事を云われたらいやでございましょう、それで新吉さんが駈出してしまったのでございますから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)