宇品うじな)” の例文
余は昨年四月十日近衛師団司令部と共に海城丸に乗り込み宇品うじなを出発したり。部屋は下等室のたなの上にて兵卒と同じさまにもてなされぬ。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
私は第一軍司令部付の国際法顧問を命ぜられて、黒木司令官らとともに、宇品うじなから出発し、大同江だいどうこうをさかのぼり、平壌へいじょうについた。
私の歩んだ道 (新字新仮名) / 蜷川新(著)
やがて鬱金木綿うこんもめんに包みし長刀と革嚢かばんを載せて停車場ステーションの方より来る者、おもて黒々と日にやけてまだ夏服の破れたるまま宇品うじなより今上陸して来つと覚しき者と行き違い
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
強すぎる真昼の光線で、中国山脈も湾口に臨む一塊の都市も薄紫のおぼろである。……が、そのうちに、宇品うじな港の輪郭がはっきりと見え、そこから広島市の全貌ぜんぼうが一目に瞰下みおろされる。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
これらの従軍記者は宇品うじなから御用船に乗り込んで、朝鮮の釜山ふざんまたは仁川に送られたのですが、前にもいう通り、何分にも初めての事で、従軍記者に対する規律というものが無いので
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
甲板から帰って来た人が、大山大将を載せた船は今宇品うじなへ向けて出帆した、と告げた時は誰も皆ねたましく感じたらしい。この船は我船よりおくれて馬関へはいったのである。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
広島駅で下車すると、私は宇品うじな行のバスの行列に加わっていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)