女松めまつ)” の例文
うめせいぎにわたくしをとめたのは、まつせいで、男松おまつおとこ姿すがた女松めまつおんな姿すがた、どちらも中年者ちゅうねんしゃでございました。
ところどころにまざ女松めまつの木地などには、たらたらと赤黄色いやにが流れて居るのであった。
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
表面は夜凪よなぎのとおり無事平穏に天神岸からともづなを解いた二百石船——淀の水勢に押されて川口までは櫓櫂ろかいなしだが、難波なにわ橋をくぐり堂島川どうじまがわを下って、いよいよ阿州屋敷の女松めまつ男松おまつ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔の後にほのめいてゐるのは、鶴を織り出した几帳きちやうであらうか? それとものどかな山の裾に、女松めまつを描いた障子であらうか? 兎に角曇つた銀のやうな、薄白いあかるみが拡がつてゐる。……
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夕湿る女松めまつ山ゆき野山ゆきおとと語らふ父母の事
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すくすくと伸びて見えるのは寮の裏にあたる男松おまつ女松めまつ、そこから吹き込んでくる朝の涼風すずかぜは、まだ起きもやらぬ長廊下をそよそよと流れて、奥の数寄屋に見える水色の絽蚊帳ろがやを波うたせていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)