はづ)” の例文
引掻ひつかきさうな権幕けんまくをするから、吃驚びつくりして飛退とびのかうとすると、前足まへあしでつかまへた、はなさないからちかられて引張ひつぱつたはづみであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
古時計はナポレオン三世のやうな気忙きぜはしさうな顔をして、露西亜人などには頓着とんぢやくなく息をはづませてゐる。紳士はいつになく露西亜が恋しくなつて来た。
「權次と丁度似合ひさ、昨日世帶を持つた禮廻りに來たよ。女房の古い帶一筋、俺の財布を叩いて小判一枚はづんでやつたが、——若い女房振りもまた惡くなかつたぜ」
「自分は先日こなひだ以前の教師が困つてゐるのを見ながら、つい金銭かね出惜だしをしみをした。それが今二千円もはづんで茶匙一本を買ふなんて、何て矛盾した事だらう。」
「大層はづみやがつたな」