太郎冠者たろうかじゃ)” の例文
太郎冠者たろうかじゃあるか。おん前に。ねんのう早かった。頼うだ人はきょうもまた、恋のやっこのお使いか、返事待つ恋、忍ぶ恋……」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あれは子供の時こそ愛嬌もありますが、ひげの生えた口から、まかりでたるは太郎冠者たろうかじゃも見る人が冷汗をかきますよ。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、杯を返す手からもうこの古武士ふるつわものは、わざと酔いを誇張して酩酊めいていした太郎冠者たろうかじゃのように細い皺首しわくびを振りうごかした。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨日きのうひる襖越ふすまごしに聞いていると、太郎冠者たろうかじゃがどうのこうのと長い評議の末、そこんところでやるまいぞ、やるまいぞにしたら好いじゃねえかと云うような相談があった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
烏帽子えぼし直垂ひたたれ着けたるもの、太郎冠者たろうかじゃあり、大名あり、長上下なががみしもを着たるもの、髪結いたるあり、垂れたるあり、十八九をかしらにて七歳ななつばかりのしのぶまで、七八人ぞたちならべる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まず、与六よろくを呼び出して申しつけよう。やいやい与六あるか。」とか何とか云うと、「へえ」と答えながらもう一人、黒い紗で顔を隠した人が、太郎冠者たろうかじゃのような人形を持って
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これは「狂言」のひとつですが、大名が太郎冠者たろうかじゃを供につれて寺もうでを致します。
文学のふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
と僕が太郎冠者たろうかじゃどころを勤めると
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「出来た出来た。勝三郎は太郎冠者たろうかじゃよな」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太郎冠者たろうかじゃ、あるか。おんまえに……」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)