天主てんしゅ)” の例文
それを何ぞや天主てんしゅともあろうに、たとい磔木はりきにかけられたにせよ、かごとがましい声を出すとは見下みさげ果てたやつでございます。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのボェトン駅には郵便局もあれば天主てんしゅ教の会堂もありその会堂に付属した貧民学校もある。なかなか盛んな駅である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
どうだい、ついこの夏までは、右大臣織田信長うだいじんおだのぶなが居城きょじょうで、この山のみどりのなかには、すばらしい金殿玉楼きんでんぎょくろうが見えてよ、金のしゃちや七じゅうのお天主てんしゅが、日本中をおさえてるようにそびえていた安土城あづちじょうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「跡はただ何事も、天主てんしゅ御意ぎょい次第と思うたがい。——では釜のたぎっているのを幸い、茶でも一つ立てて貰おうか?」
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
じょあん孫七まごしち、じょあんなおすみ、まりやおぎんの三人は、土のろうに投げこまれた上、天主てんしゅのおん教を捨てるように、いろいろの責苦せめくわされた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天主てんしゅのおん教を奉ずるものは、その頃でももう見つかり次第、火炙ひあぶりやはりつけわされていた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
悪魔はアントニオ上人しょうにんにも、ああ云う幻を見せたではないか? その証拠には今日になると、一度に何人かの信徒さえ出来た。やがてはこの国も至る所に、天主てんしゅ御寺みてらが建てられるであろう。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
観音かんのん釈迦しゃか八幡はちまん天神てんじん、——あなたがたのあがめるのは皆木や石の偶像ぐうぞうです。まことの神、まことの天主てんしゅはただ一人しか居られません。お子さんを殺すのも助けるのもデウスの御思召おんおぼしめし一つです。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)