大蛇をろち)” の例文
すると間もなく彼の周囲が、次第にうす明くなるにつれて、その星のやうな光物が、殆ど馬さへ呑みさうな、凄じい大蛇をろちの眼に変つた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ふり仰ぐと、とぼしい灯の中に、斷たれた綱はダラリと下がつて大蛇をろちのやうに土間を這ひ、與三郎がそれを引摺つて片付けようとしてゐるのでした。
浦島の乘つた龜の甲だとか、八股の大蛇をろちの尻尾だとか名をつけて、飛んでもないものを擔ぎ込んで來るだらう。なにしろ、家のお師匠樣とは好い取組だ。はゝゝゝゝ。
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
また「汝の哭く故は何ぞ」と問ひたまひしかば、答へ白さく「我が女はもとより八稚女をとめありき。ここに高志こし八俣やまた大蛇をろち、年ごとに來てふ。今その來べき時なれば泣く」
されど今の御疑ひ一〇二僻言ひがごとならぬは、大師は神通自在じんつうじざいにして一〇三隠神かくれがみえきして道なきをひらき、いはほるには土を穿うがつよりもやすく、大蛇をろち一〇四いましめ、化鳥けてう一〇五奉仕まつろへしめ給ふ事
三 本堂の後ろの箱にとぐろ卷く大蛇をろちは左甚五郎の作
鹿野山 (旧字旧仮名) / 大町桂月(著)
「これはおれが高志こし大蛇をろちを斬つた時、その尾の中にあつた剣だ。これをお前たちに預けるから、お前たちの故郷の女君をんなぎみに渡してくれい。」
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ告りたまへるまにまにして、かくけ備へて待つ時に、その八俣やまた大蛇をろちまことに言ひしがごと來つ。すなはち船ごとにおのが頭を乘り入れてその酒を飮みき。ここに飮み醉ひて留まり伏し寢たり。
高志こし大蛇をろちを退治した素戔嗚すさのをは、櫛名田姫くしなだひめめとると同時に、足名椎あしなつちが治めてゐた部落のをさとなる事になつた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
小蒲団に大蛇をろちの恨み鱗形うろこがた 桃青
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)