大薬鑵おおやかん)” の例文
旧字:大藥鑵
と押えた手を放しますと、側に大きな火鉢がありまして、かん/\と火がおこっております。それに掛っている大薬鑵おおやかんを取って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すすだらけになった自在鍵じざいかぎ、仁王様の頭ほどある大薬鑵おおやかん、それも念入りに黒くなったのを中にして、竜之助とがんりきとは炉を囲んで坐りました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老栓は忙しそうに大薬鑵おおやかんを提げて一さし、一さし、銘々のお茶をいで歩いた。彼の両方のまぶたは黒い輪に囲まれていた。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
二人の間にプープーと湯気を吹いているアルミの大薬鑵おおやかんや、外の雪をチラチラと透かしながら一面に水滴しずくをしたたらしている硝子ガラス窓は、二人が長い間話し込んでいる事を証明していた。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
五徳をって引傾ひっかたがった銅の大薬鑵おおやかんの肌を、毛深い手の甲でむずとでる。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巨大なるたこの頭を切り取って載せたように、頭頂は大薬鑵おおやかんであるが、ボンのくぼには芼爾もうじとした毛が房を成している。巨大な、どんよりとした眼が、パッカリと二つあいていて眉毛は無い。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
このあかりがさしたので、お若は半身を暗がりに、少し伸上るようにしてすかして見ると、火鉢には真鍮しんちゅう大薬鑵おおやかんかかって、も一ツ小鍋こなべをかけたまま、お杉は行儀よく坐って、艶々つやつやしく結った円髷まるまげ
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)