大砲おおづつ)” の例文
大砲おおづつで権現堂の堰を壊してお江戸を水浸しにしてしまうともいいますし……聞いていて私、何だか自棄やけになりそうで困ってしまった」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
その時、霧を通して見るようなほの赤い江戸の夜空に、大砲おおづつのように鳴り渡る遠雷とおなりの響を聞いたことだけを与惣次ははっきり記憶えている。
巨椋おぐらの池の堤に出たときは、戦場の銃声も途絶えて、時々思い出したように、大砲おおづつの音がかすかにきこえてくるだけだった。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ひょろ松どの、ためいきばかりついておらんで、わけを話してみらっしゃい。品川砲台の大砲おおづつでも盗まれましたか」
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「さあ、日本中がいくさになっても、ここまでは舞い込んで来ますまいね、第一、大砲おおづつが通りませんからな」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
天守の千畳敷へ打込んだ、関東勢の大砲おおづつが炎を吐いて転がる中に、淀君をはじめ、夥多あまたの美人の、練衣ねりぎぬくれないはかま寸断々々ずたずたに、城と一所に滅ぶる景色が、目に見える。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
現に同じ宿やどの客の一人、——「な」の字さんと言う(これは国木田独歩くにきだどっぽの使った国粋的こくすいてき省略法に従ったのです。)薬種問屋やくしゅどいやの若主人は子供心にも大砲おおづつよりは大きいと思ったと言うことです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、何しろ小川以来の難戦苦戦だ、大砲おおづつ小筒で追い打ちかけられている最中だ、そこへからんで来たので、うるさくなって、やったらしい。死んだか生きたか、見とどけた者は居ないのよ。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
わたしは泣きごとをいって他人様ひとさまにも泣いていただこうなんて、そんな事はこれんばかりも思やしませんとも……なるならどこかに大砲おおづつのような大きな力の強い人がいて、その人が真剣におこって
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
が、何しろ小川以来の難戦苦戦だ、大砲おおづつ小筒で追い打ちをかけられている最中だ、そこへからんで来たので、うるさくなって、やったらしい。死んだか生きたか、見とどけた者はいないのよ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
ドンドンパチパチ大砲おおづつ小筒、鳴るは蜂の頭、引くは天狗の鼻、さあてこの次第如何相成りまするか、ただいま、ホコダ塚において合戦真最中! 天狗が水戸へ逃げるか、田沼が江戸へ逃げるか。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
いくさの有様見てあれば、だ、利あらずと見て逃げるは天狗、追うは田沼勢、府中は小川のあたり、ドンドンパチパチ大砲おおづつ小筒、鳴るは蜂の頭、引くは天狗の鼻、さあてこの次第如何相成りまするか
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)