大松おおまつ)” の例文
という折から安田一角は大松おおまつの蔭に忍んでおりましたが提灯が消えるを合図にスックと立ってすかし見るに、真暗ではございますが、きらつく長いのを引抜いてこう透して居ります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ななめにうねった道角みちかどに、二抱ふたかかえもある大松おおまつの、そのしたをただ一人ひとり次第しだいえた夕月ゆうづきひかりびながら、野中のなかいた一ぽん白菊しらぎくのように、しずかにあゆみをはこんでるほのかな姿すがた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おおいと呼べばおうと答えて渡守わたしもりが舟を出す位だが、東側はただもう山と畠で持切って、それから向うへは波の上一里半、麻生天王崎あそうてんのうさき大松おおまつも、女扇おんなおうぎの絵に子日ねのひの松位にしか見えない。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
左右は大松おおまつ並樹なみきにして、枝を交えて薄暗きところを三町ばかりまいりますると、突当りが大門でございますが、只今はまるで様子が違いましたが、其の頃は黒塗の大格子おおごうしの大門の欄間は箔置はくおきにて