大揉おおも)” の例文
平次が中橋の鳴子屋へ行った時、仕度までした葬いが、門口かどぐちでガラッ八に止められて、大揉おおもめの真っ最中でした。
じいさんは二、三日東京へ出ていて、留守であった。お庄が帰って来る前に、母子三人のあいだに大揉おおもめがあって、お袋も爺さんに頭脳あたまをしたたかなぐられた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
御承知の通り、区画整理はどこでもおおごた付きで、なか/\容易に決着しません。こゝらも大揉おおもめに揉めたんですが、それでもまあうにかうにか折合が附いて……。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
その使者が帰ってのはなしによると、数正と運命を共にすることには、家族の内で、反対が起り、間際まぎわになって、大揉おおもめに揉めているというのである。そして、近正の返辞としては
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風雨をにらんであれほどの大揉おおもめの中にじっと構えていたというが、その一念でも破壊こわるまい、風の神も大方血眼ちまなこで睨まれては遠慮が出たであろうか、甚五郎じんごろうこのかたの名人じゃ真の棟梁じゃ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小野田を手甲擦てこずらせていたと云う父親の言分から、内輪が大揉おおもめにもめて、到頭田舎へ帰って行くことになった父親に対する憎悪が、また胸に燃えたって来るのを覚えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)