夜鷹蕎麥よたかそば)” の例文
新字:夜鷹蕎麦
それから、柳森稻荷の後ろに出て居る、夜鷹蕎麥よたかそばに首を突つこんで、熱いところを一杯キユーとやり、鼻唄交りで出て來たのは、やがて亥刻よつ半過ぎだつたでせう。
くもをかくしたさくら樹立こだちも、黒塀くろべいくらつた。舊暦きうれきぐわつ二十一にちばかりの宵闇よひやみに、覺束おぼつかない提灯ちやうちんひとふたつ、をんなたちは落人おちうど夜鷹蕎麥よたかそばかゞんだかたちで、溝端どぶばたで、のどにつかへる茶漬ちやづけながした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「まだ薄明りですが、それでも路地の外にはもう、夜鷹蕎麥よたかそばの屋臺が出て居ますよ」
「丹波屋の隱居は、物事が理詰めで、滅多なことでは人に物を言はないが、あんまり几帳面で附き合ひにくい——とね。すると、お隣りの夜鷹蕎麥よたかそばの半兵衞は、あわててその口をふさぎさうにしましたよ」