夜深よふか)” の例文
げに夜深よふかくして猛虎の声に山月の高き島田の気合に、さしも新徴組の荒武者が五体ピリピリと麻痺まひします。
折れ何とも、六十の親仁が天窓あたまを下げる。宰八、夜深よふかじゃが本宅まで送ってくれ。片時もこの居まわり三町の間にりたくない、生命いのちばかりはお助けじゃ。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえば二人が深夜非常線にかかった時の光景には一口触れるが、そういう出来事に出合うまで、彼らがどこで夜深よふかしをしていたかの点になると、彼は故意にぼかしさって
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで其十九日の夜深よふかに須田伯耆は他の一人と共に逃げ込んで来て、蒲生源左衛門を頼んだ。ただ来たところで容れられる訳は無いから、飛んでもない手土産を持って来た。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
定めしおれの所業しわざをば不審もして居たろうがまあ聞け、手前の母に別れてから二三日の間実は張りつめた心も恋にはゆるんで、夜深よふかに一人月をながめては人しらぬ露せまそでにあまる陣頭のさびしさ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)