堕胎だたい)” の例文
旧字:墮胎
「何ですって……わたし堕胎だたいしたかどうか巡査が調べに来ているんですって……ホホホホホ生意気な巡査だわネエ。アリバイも知らないで……」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
別にはげしい毒草という訳でもない。普通の人は、ただこうした草花だと思っている。注意もしない。ところが、この植物は堕胎だたいの妙薬なんだよ。
毒草 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
六十歳未満は、窃盗十五人、詐欺一人、殺人六人、嬰児殺し三人、堕胎だたい一人、放火九人、贓物ぞうぶつ収受一人、文書偽造一人。
とうとう仕方なしに、胎の子には罪なことだが、堕胎だたいをすることに決心をした。若い男は、堕胎道具と、薬品を、さるところで手に入れて、女を呼びだした。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
堕胎だたいをしたものは刑法の罪人だといえば、何の事かもとより分らず、お前巡査につかまってろうへ入れられなけりゃならないといえば、また二十五座へ遁込にげこんで躍るというであろう
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんぞまた人だますのんやないかと半信半疑でしたけど、何せその時分は堕胎だたい事件がやかましいて、何々博士がつかまえられた、何々病院がやられたと、ようそんな記事が新聞に出ましてん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鬼灯の根で堕胎だたいしようとしたのだ。
婦人の堕胎だたいをはかったり、結核患者の病巣びょうそうにある空洞くうどうを、音響振動を使って、見事に破壊し、結核病を再発させるばかりか、その一命をとうという恐ろしいくわだてをした人なんです。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
およそ堕胎だたいということをした者は、これが罪とも恥とも知らないでした事にしろ、心は腐っても、人間という目鼻だけの、せめて皮でもかぶってるうちは、二人ならんじゃあ居られやしない。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人を堕胎だたいさせることばかりに注意力を向け、おのれの空洞くうどうが激しい振動をおこして、結締織けったいしきを破壊させ、自分の生命を断ってしまうなどということを一向に注意してやらなかったのです。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こいつを使って堕胎だたいをやらせようというのが、柿丘秋郎の魂胆こんたんだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)