坐睡いねむ)” の例文
が、額の下の高麗こうらいべりの畳の隅に、人形のようになって坐睡いねむりをしていた、十四になるはかま巫女みこを、いきなり、引立てて、袴を脱がせ、きぬいだ。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その中でも眠流ねむりながしまたはネブタ流しというのが、これからそろそろ始まる夜仕事に、坐睡いねむりの出ぬまじないだったことは、前に信州随筆という本に詳しく書いておいた。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうして羊の毛織りの端くれで鼻汁はなをかんで、その鼻汁をかんだ切布を頭の上に載せて乾しながら、うつうつと坐睡いねむり好い心持に暖まって居るざまというものはないです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
大抵の者は自分は自分だけの胸の中で下らぬ事を考えて居るか坐睡いねむりしたりするものである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その爺さんがね、見ると……その時、角兵衛という風で、頭を動かす……坐睡いねむりか、と思うともがいたんだ。仰向あおむけにって、両手の握拳にぎりこぶしで、肩をたたこうとするが、ひッつるばかりで手が動かぬ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)