圏点けんてん)” の例文
旧字:圈點
そのうちに赤木は、「一体支那人は本へしゅ圏点けんてんをつけるのが皆うまい。日本人にやとてもああ円くは出来ないから、不思議だ。」
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かれは柳行李やなぎごうりをあけて、そのころの日記を出して見た。九月二十四日——秋季皇霊祭。その文字に朱で圏点けんてんが打ってあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
綾子手に採りひらき見れば、深川夫人乞食を救う、と標題みだし圏点けんてんを附してその美徳を称讃し、気味悪きまで賞立ほめたてたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
“Nonsense”という言葉には圏点けんてんをつけて、ノンセンスと仮名をも振って大事そうに記している。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
圏点けんてんのないのは障子しょうじに紙がってないようなさびしい感じがするので、自分で丸を付けた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我読む部分は雑録、歴史、地理、人物月旦げったん、農業工業商業等の一部なり。新体詩は四句ほど読み、詩は圏点けんてんの多きを一首読み、随筆は二、三節読みて出来加減をためす事あり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
赤耀館事件の真相と呼び、圏点けんてんまで打ってあるところを見ると、矢張り私の想像したとおりに、今日まで発表された事件の内容以外に、隠されている奇怪な事実があるのに違いない。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人物評論でいかなる好人物でもちょっとくさした句があると、彼はすぐに圏点けんてんをつける。人の悪口あくこうを書くのがいいと思っているので、そういう句があると「翻天妙手ほんてんみょうしゅ、衆と同じからず」
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
その壁間にかかぐるところ、支那料理法の憲法なる「随園食箪ずいえんしたん」には何と書いてある。試みに田山白雲が圏点けんてんを付してあるところだけを読んで、仮名交り文に改めてみてもこうである
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
線や圏点けんてんが入れてあった。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
目的の江湖雑誌こうこざっしは朝日新聞の下に折れていた。折れてはいるがまだ新らしい。四五日前に出たばかりのである。折れた所は六号活字で何だか色鉛筆の赤い圏点けんてんが一面についている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことにむずかしい字には圏点けんてんをつけてそのそばに片仮名でルビをふってみせた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)