四顧しこ)” の例文
けれども、ふゆ鳥打帽とりうちばうかむつた久留米絣くるめがすり小僧こぞうの、四顧しこ人影ひとかげなき日盛ひざかりを、一人ひとりくもみねかうして勇氣ゆうきは、いまあいする。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田水や小川の仄白ほのじろさは、夜明け近くも見えるが、四顧しこは、黒綿のようなもやにつつまれ、空は未明の雲がひくい。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酔人目覚めざめて四顧しこ焦土となれるを見その身既に地獄にあるものと誤りなす一条の如きは、即ち仏教的悲哀と滑稽との特徴をしてはなはだ顕著ならしめたるものなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
樵径しょうけいを失したるがごとく、茫然ぼうぜんとして四顧しこ向かうところを知らず。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
山絵図をひろげ、つぶさに、四顧しこの地勢と考え合わせてみると、どうやら加賀境をうしろに、越中の西端、五位山ごいさんからなしとうげへ、向いつつあるように思われた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四顧しこして、大声にいうと、馬首を敵地へ向けて、駈け出そうとした。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)