かまびす)” の例文
決定論と非決定論とのかまびすしい論争は、よき生活を実際に生きた人の体験においてはなんら疑うべき余地もないほど明瞭にまた容易に解決されておるのである。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
中年の女盛りには美人としての評が高く、洋行中にも伊藤公爵との艶名艶罪がかまびすしかった。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
最早もはや袂別わかれ時刻じこくせまつてたので、いろ/\の談話はなしはそれからそれとくるかつたが、兎角とかくするほどに、ガラン、ガラ、ガラン、ガラ、と船中せんちゆうまは銅鑼どらひゞきかまびすしくきこえた。
日清にっしん戦役が済んで遼東還附りょうとうかんぷに関する問題がかまびすしく、また、東北三陸の大海嘯だいかいしょうがあり、足尾銅山鉱毒事件があり、文壇では、森鴎外の『めさまし草』、与謝野鉄幹よさのてっかんの『東西南北』が出たころ
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かまびすしい話聲に耳を留めてゐた。が、狹い車室の中には、間もなく、酒の香ひとゝもに、煙草の煙が濛々と漂つたので、女は細い眉を顰めて、輕い咳をも洩らした。手巾で面前の煙を拂つたりした。
新婚旅行 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)