)” の例文
嗚呼あゝ天地味ひなきこと久し、花にあこがるゝもの誰ぞ、月にうそぶくもの誰ぞ、人世の冉々ぜん/\として減毀げんきするをし、ちうとして命運のわたくししがたきを慨す。
哀詞序 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
夜深うしてこうを行ふ彼何の情ぞ 黒闇々中刀に声あり 圏套けんとう姦婦の計を逃れ難し 拘囚こうしゆう未だ侠夫の名を損ぜず 対牛たいぎゆう楼上無状をす 司馬しば浜前はままえに不平を洩らす 豈だ路傍狗鼠くそ
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
衰病ニ由ルトイヘドモマタ賦性ノ然ラシムル所。コレスベキノミ。戊午杪冬びょうとう念八日箱崎邸ノ寓楼ぐうろうニ識ス。時ニ新居ノ経営イマダ成ラズ。楼上風雨寒甚シ。乳児ハ乳ニ乏シク夜間シバ/\ク。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
満袖まんしゆう啼痕血痕に和す 冥途敢て忘れん阿郎の恩を 宝刀を掣将とりもつて非命をす 霊珠を弾了して宿冤しゆくえんを報ず 幾幅の羅裙らくんすべて蝶に化す 一牀繍被しゆうひ籠鴛ろうえんしたふ 庚申山下無情の土 佳人未死の魂を埋却す
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)