喚起かんき)” の例文
このことについては、帆村は田鍋捜査課長にも報告して、その注意を喚起かんきした。課長は帆村ほどこの問題を重大視はしていない。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とにかくに、この苦力らの風采がどんなに好ましからぬ記憶の流れを喚起かんきしたかは、とても言葉に言い尽くせないのである。
このおそろしい一致いっちは。おそれずになお仔細しさいるならば、前世に喚起かんきした、その前々世の記憶の中に、恐らくは、前々々世の己の同じ姿を見るのではなかろうか。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わたしもはじめなんの気なしにながめていましたが、そのうちにとつぜんある連想が喚起かんきされました。
ハムレット (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
中学の教師堀田某ほったぼうと、近頃ちかごろ東京から赴任ふにんした生意気なる某とが、順良なる生徒を使嗾しそうしてこの騒動そうどう喚起かんきせるのみならず、両人は現場にあって生徒を指揮したる上
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「九州民報」では、高野貞三が、さかんに、論陣を張って、「全若松市民は、飢餓に瀕して、洞海湾の藻屑とならんとする、数千の沖仲仕救済のために起て」と、輿論の喚起かんきに努めた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
壁を通して隣室の話声をことごとく録音するという恐るべき力を持っていることについて御注意を喚起かんきしておきたい。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
直ぐに彼は、見当ちがいだったことに気がついたけれども、その記事は、思ったよりも平易へいいである上に、その内容は大江山警部の注意を喚起かんきするのに充分だった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
硝子をドンドン叩いて、通行の人の注意を喚起かんきした。しかし誰一人、彼の方を見る者がなかった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小山嬢は、そうなった靴をしきりにさしあげて、美貌の青年の注意を喚起かんきしている風に見えた。すると青年は感激の面持おももちで、つと小山嬢の方に寄ると、靴もろとも両手でぐっと抱きしめた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
袋探偵はこのことをまことに若紳士に告げ、その注意を喚起かんきした。