タダ)” の例文
おれが見たのは、タダ一目——唯一度だ。だが、おまへのことを聞きわたつた年月は、久しかつた。おれによつて来い。耳面刀自。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
これには——『パチノ』ノ墓穴ハ頻々ヒンピンタル火災ト時代ノ推移ノタメニツマビラカナラザルニ至リ、タダ『ギンザ』トイウ地名ヲ残スノミトハナレリ。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
タダ、野ニ清鶯セイオウアルノミ
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乳母オモに相談かけても、一代さう言ふ世事にアヅカつた事のない此人は、そんな問題には、カヒないタダ女性ニヨシヤウに過ぎなかつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
タダ野ニ清鶯セイオウノ有ルノミ
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さうでなくても、経文の上に伝へた浄土の荘厳シヤウゴンをうつすその建て物の様は想像せぬではなかつた。だがのあたり見る尊さはタダ息を呑むばかりであつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)