哀婉あいえん)” の例文
これは白楽天はくらくてんの詩「琵琶行びわこう」のはじめの句だが、いまの宋江そうこうの身は、そんな哀婉あいえんなる旅情の懐古にひたりうるどころではなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という哀婉あいえんな一章などを拾い読みしたりしつつ、ひる過ぎ、やっと近江おうみうみにきた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
今その手録された詠草を見ると、「薫染くんぜん」に収められた歌以外のものに、かえって真実味に富んだ、哀婉あいえん痛切なる佳作が多いような気がする。私は先ず手録された詠草の最初にあった
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「堀川氏の筆に成れる、哀婉あいえんきわまりなき恋愛小説」とか何とか広告しますよ。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
道庵の昂奮もそのいわれがないではないが、何をいうにも、この祭文語りは山伏に近い古風なもので、ことに語り物が、哀婉あいえんたる苅萱道心かるかやどうしんの一節と来ているのだから、多少の菩提心ぼだいしんをこそ起せ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これに加うるに中国一流の華麗豪壮な調ちょうと、哀婉あいえん切々の情、悲歌慷慨こうがいの辞句と、誇張幽幻な趣と、拍案はくあんたんの熱とを以て縷述るじゅつされてあるので
三国志:01 序 (新字新仮名) / 吉川英治(著)