和讃わさん)” の例文
「なあにおめえ、遠い昔にゃあ、お経文をそのまま、歌謡うたにうたったものだあな。——和讃わさんだってその一つだろうじゃねえか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晩には通夜僧つやそうが来て御経を上げた。千代子が傍で聞いていると、松本は坊さんを捕まえて、三部経さんぶきょうがどうだの、和讃わさんがどうだのという変な話をしていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御殿の中の和讃わさんは、素晴らしく美しいものでした。それは異國的で、妖艶で、美しい女聲の大合唱が、岸を打つ浪のやうに、夜の空氣をかき立てるのです。
それをまた迎える本堂は花を降らし、衆僧は棺をめぐって和讃わさんの合唱と香の煙りとで人を窒息させた。
仕事の合間、与八は海蔵寺の東妙和尚について、和讃わさんだの、経文きょうもんの初歩だのというものを教わります。それと共に、東妙和尚の手ずさみをみよう見真似みまねで彫刻をはじめました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「迦葉尊者は鶏足に袈裟を守って閉じ籠る」という和讃わさんあれば、本邦では普通鶏足山に入定すとしたのだ。支那にも『史記』六に〈始皇隴西ろうせい北地を巡り、鶏頭山に出で、回中を過ぐ〉とある。
「これは何の文句でしょうね。和讃わさんかしら」
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
妙音よどみなく、和讃わさんを咏じて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
和讃わさんかい、あれも教えてやるよ、どこまで覚えたか忘れやしまいね」
やがて和讃わさんがはじまる。叩鉦かねの音がそろって、声自慢の男女が集ると