吾妻あがつま)” の例文
上州の吾妻あがつまの渓谷から草津を経て、白根しらね万座まんざ、更に渋峠しぶたうげを越して信州に出る間も段々避暑地として目をつけられて来てゐるやうです。
談片 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
四阿あずまや山は信州の称呼で、上州では吾妻あがつま山と唱えている。頂上に日本武尊を祭神とした社があるが、これも上州と信州との二社に分れている。
上州の古図と山名 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その上、多くの郎党を養い、眷族けんぞくもみな、土地、武力を蓄え、東山道から吾妻あがつま山脈をうしろにして、坂東の大平原に、南面している形であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上州吾妻あがつま嬬恋つまごひ村の運送業、浅川治助が、地元の海軍工場から時たまトラックの御用を仰せつかつた関係で、徴用工、熊川忠範の顔を覚えてゐた。
秋の雲 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
この国も紙漉場をあちらこちらに見ます。多野たの郡、山田郡、吾妻あがつま郡、いずれにも仕事場を見るでしょう。この県の織物については既に記しました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
心持ちなそいになった北の丘には、石をのせた板屋根の百姓家が、まるで吾妻あがつま川のふちでも旅するような感じがする。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
今度とは反對に吾妻あがつま川の下流の方から登つて草津温泉に泊り、案内者を雇うて白根山の噴火口の近くを廻り、澁峠を越えて信州の澁温泉へ出た事がある。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
少し離れてはいるが上野こうずけ吾妻あがつま嬬恋つまごい村大字田代なども、浅間山の東側を伝って碓氷の軽井沢と通うている。この田代という地は全国に何百とあるが意味の深い地名だ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
吾妻あがつまはやとこひなきて
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
春は、足もとの若草にだけ見えるが、遠い視界の山々は、八ヶ岳でも、吾妻あがつま山脈でも、雪のない影はない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暮阪くれさかの峠の上には、瀟洒な茶店があつて、其処では老婆がラムネを冷たい水に浸して客を待つて居た。吾妻あがつま川の渓は狭く前に展けて、特立した岩山が面白い形をして其所に聳えて居た。
草津から伊香保まで (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
群馬県吾妻あがつま
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この上は、上州吾妻あがつまへおのがれあるが然るべきでしょう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)