かの)” の例文
夢見たばかりで男の願いはかのうたでないかと言ったとは、この方が道理に合ったようであり、読者諸士滅多に夢の話しもなりませんぞ。
吾はどのみち助からないと、初手ッから断念あきらめてるが、お貞、お前の望がかのうて、後で天下ばれたのしまれるのは、吾はどうしても断念められない。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とは、しんの男子の態度であろう。男もこの点まで思慮しりょが進むと、先きに述べたる宗教のおしうる趣旨にかのうてきて、深沈しんちん重厚じゅうこう磊落らいらく雄豪ゆうごうしつとの撞着どうちゃくが消えてくる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
世界が大水になって神の思召おぼしめしにかのうた者のみが、生き残ったという信仰さえあったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私の現代精神の綜合そうごうと云うのは、この弊を救うためで、一方ではこの窮窟な束縛を解くと同時に、名にかのうたる実を有する主義主張を並立せしめようとするためであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
トリストラム・シャンデーと云う書物のなかに、この書物ほど神の御覚召おぼしめしかのうた書き方はないとある。最初の一句はともかくも自力じりきつづる。あとはひたすらに神を念じて、筆の動くに任せる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
されば太宰春台だざいしゅんだいが『通鑑綱目つがんこうもく』全篇を通じて朱子の気にかのうた人は一人もないといったごとく、第一儒者が道徳論の振り出しと定めた『春秋』や、『左伝』も、君父をしいしたとか、兄妹密通したの
薄 かねてのお望みにかのうた方を、何でお帰しなさいました。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
案の定、その場から、思いがかのうた、お二人さん。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)