右顧左眄うこさべん)” の例文
右顧左眄うこさべん、雄大無比なるこの高原の絶勝を眺めながら湯本へ着いたのが、もう日が暮れて大分間が経ってからである。
一益の予想に反して、秀吉は各地の小城出城には右顧左眄うこさべんなく、敵の中巣ちゅうそうへ向って、全主力を傾倒し来ったのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「俺はもう心を決めているのだが、兄者人あにじゃひと右顧左眄うこさべん、家のことを思ったり、大逆になるのを恐れたりして……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右顧左眄うこさべんし、周章狼狽しゅうしょうろうばいした自分たちは、天地も顛動てんどうする大きな変化に身をさらわれた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
なぜ右顧左眄うこさべんをするか。きょうの御法事に、上野介の首級しるしを供えぬのか。——時期の何のと、小賢こざかしいことをいうているような事で、成就じょうじゅがなろうか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初の計画もくろみ掣肘せいちゅうし——自分自身掣肘し、ああでもあるまいこうでもあるまいかと、躊躇逡巡右顧左眄うこさべん、仏心を出している間に、彼奴らいわば長袖者流、結託なして余を弾劾だんがい
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いずれにせよ、もはや右顧左眄うこさべんしているときではない。朝敵尊氏を討つに、なんのおためらいなのか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又いかように相成ろうとも、われ等、さむらい奉公の者が、この後とも歩む道は、一筋でしかない。右顧左眄うこさべん、要らぬことじゃ。侍に生れたれば侍に死ぬる。それでしかない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは時の潮の真っ先に立つ人だ。その人にくだった天の使命だ。打破してはて、壊しては建て、その人は右顧左眄うこさべんしてはならない。一点の私もなければ民衆はついてゆく。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——なおこれ以上、右顧左眄うこさべんしていては、一歩もすすまぬ。まず対策は、その日その日に」と、彼はやがて、兼好に依頼された皇子のお便りを持って、侍者じしゃへ、それを託しに行った。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
要するに何進は、下賤から人臣の上に立ったが、大なる野望家にもなりきれず、ほんとの悪人にもなりきれず、位階冠帯は重きに過ぎて、右顧左眄うこさべん、気ばかり病んでいるつまらない人物だった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
らざる右顧左眄うこさべんだ。一道をつきぬくのに何の傍見。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信雄は、右顧左眄うこさべんして
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉もまた、右顧左眄うこさべん
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)