取附とッつ)” の例文
かまちがすぐにえんで、取附とッつきがその位牌堂。これには天井てんじょうから大きな白の戸帳とばりれている。その色だけほのかに明くって、板敷いたじきは暗かった。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酒の中へ麻酔薬しびれぐすりを入れて飲ませるので、これを飲ませれば身体が利かん、此処にはお医者もおいででしょうから毒酒を調合してお片附けなさえ、それも初めからでは何うして中々取附とッつけねえ
つれの夫人がちょっと道寄りをしたので、銑太郎せんたろうは、取附とッつきに山門の峨々ががそびえた。巨刹おおでらの石段の前に立留まって、その出て来るのを待ち合せた。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小「このお内儀さんは蛤に取附とッつかれて居るか知ら」
厠は表階子おもてばしご取附とッつきにもあって、そこはあかりあかるいが、風はし、廊下は冷たし、歩行あるくのも物珍らしいので、早瀬はわざと、遠い方の、裏階子の横手の薄暗い中へ入った。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一軒隣は按摩あんまだと云うじゃねえか。取附とッつきの相角がおでん屋だッて、かッと飲んだように一景気附いたと思や、夫婦で夜なしに出て、留守は小児こどもの番をする下性げしょうの悪いじいさんだと言わあ。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの橋の取附とッつきに、松の樹で取廻とりまわして——松原はずッと河を越して広いの林になっておりますな——そして庭を広く取って、大玄関おおげんかんへ石を敷詰しきつめた、素ばらしい門のあるやしきがございましょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)