厚顔こうがん)” の例文
旧字:厚顏
厚顔こうがんなる哉。これほどいっておるのにまだ分らんか。汝、——いかほど、弁をふるい、智をもてあそぶとも、なんでこの周瑜を変心させることができよう。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんかと云って筆者わたくしは、話の最初に於て、安薬やすぐすり効能こうのうのような台辞せりふをあまりクドクドと述べたてている厚顔こうがんさに、自分自身でもくに気付いているのではあるが
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
西村の厚顔こうがんな指先は、更らに少しずつ少しずつ前進して、肩先から腕の方へとって行った。それらの指先はとりすました西村社長とは別物の、不思議な生物いきものの様に見えた。
枕崎で飲んだ焼酎、峠であおったコップ酒が、彼の厚顔こうがんな言説をささえていた。それに相手が出戻り女で、気分的にもかなり荒れているという計算も、心の底に動いていた。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
もしう云ふ態度で平岡にあたりながら、一方では、三千代の運命を、全然平岡にゆだねて置けない程の不安があるならば、それは論理のゆるさぬ矛盾を、厚顔こうがんに犯してゐたと云はなければならない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
罪を待つ身でありながら何たる厚顔こうがん——とそしる者もある。虫のいいやつと、舌打ちならす者もある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら厚顔こうがんな男でも、こういうまずい顔を示していれば——。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)