千秋せんしゅう)” の例文
それと運命を共にするの高尚な犠牲心が浅草の観音を守る市民と同じように行かなかったのは何故でしょう、これは千秋せんしゅうの恨事ではありませんか……
山道 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつのにか経ってしまうのだがそのに限って、時間のたつのが遅いの何のって、——千秋せんしゅうの思とはあんな事を云うのだろうと、しみじみ感じました
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「明智さん、ぼくは、どんなにかきみに会いたかったでしょう。一日千秋せんしゅうの思いで待ちかねていたのですよ。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
寛永の鎖国令こそ千秋せんしゅうの遺憾なれ。もしこの事だになくは、我が国民は南洋群島より、支那シナ印度インド洋におよび、太平洋の両岸に、その版図を開きしものそれ幾何いくばくぞ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
またずぶずぶともぐりこんで、そこで手足をだらんとして浮力ふりょくが勝って身体の浮きあがるのを千秋せんしゅうのおもいで待った。ようやく浮き身がついて、身体がすううっとよっていった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「とう——とうたらりたらりらア——。ところ千代ちよまでおわしませエ——。吾等も千秋せんしゅうさむらおう——。鶴と亀とのよわいにてエ——。幸い心にまかせたりイ——。とう——とうたらりたらりらア……」
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この松さんは今千秋せんしゅうと号して書家になっているそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
おせいこそ下手人げしゅにんであるむねを、如何程か書き度かったであろうに、不幸そのものの如き格太郎は、それさえ得せずして、千秋せんしゅう遺恨いこんいだいて、ほし固って了ったのである。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしその娘が丸薬缶でなくってめでたく東京へでも連れて御帰りになったら、先生はなお元気かも知れませんよ、とにかくせっかくの娘が禿はげであったのは千秋せんしゅう恨事こんじですねえ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)